盗聴器発見アプリについて
盗聴器発見器アプリへの見解
先日、お客様との会話の中で、盗聴器発見アプリと呼ばれる、iPhoneなどスマホやタブレットPC用のソフトウェアについて、話題が出ました。
実は、同様のご質問が他のお客様からも何件か寄せられており、当社としましても、何らかの見解を述べるべきかと思い、今回この場にて、上記の盗聴器発見器アプリについての見解を述べさせていただきます。
まず結論から申し上げて、
盗聴器発見アプリは、盗聴器の発見には、ほとんど役に立たない
という見解を述べさせていただきます。
以下、順を追って弊社がこのように判断した理由をご説明いたします。
1.盗聴器の発見アプリ、驚きの実験結果
弊社では、初めてお客様から上記アプリの存在を質問された後、独自に幾つかの実証実験を試みました。
早い話が、iPhoneなどのモバイル端末に盗聴器発見アプリを実際に入手して、弊社が所有する盗聴器を使って盗聴波の探知実験を行いました。
使用した盗聴器発見アプリはどの社のものとは申せませんが、ドコモ・KDDI・SoftBankの3機種のスマホに盗聴器発見アプリを入れて、盗聴波の検知を試みました。
なお、実験に使用した盗聴波は、盗聴器に使われやすいUHF帯の398.605MHz、399.455MHz、399.030MHzの3種です。
UHF帯域の盗聴器を実験に使ったのは、ワンセグの周波数帯とわりと近いので、「ひょっとすれば、盗聴器に反応するかも?」という淡い期待を抱いての事です。
しかし、実験結果は全ての機種、全ての周波数帯でアプリは反応せずというものでした。
2.検証
弊社としましては、この実験結果を実験する以前から予見しておりました。
予見できた理由は単純です。
スマホの受信周波数帯が、そもそも盗聴器の出す盗聴波に対応していないから。要は受信能力の問題です。
かみ砕いて説明しましょう。
一般的に使用されている携帯電波の使用帯域は700Mhz帯〜2100Mhz(2.1Ghz)帯まで。
このうち、現在最も広く使用されているスマホ用の使用帯域は1900Mhz帯〜2100Mhz帯です。当探偵事務所が実験に用いたのもこの機種です。
KDDIの場合、上り:1920〜1940Mhz、下り:2110〜2130Mhz。
ドコモの場合、上り:1940〜1960Mhz、下り:2130〜2150Mhz。
Softbankの場合、上り:1960〜1980Mhz、下り:2150〜2170Mhzです。
つまり、盗聴器発見アプリあるいは盗聴器発見器アプリをダウンロードしても、スマホが受信できる盗聴器の周波数は、1900Mhz帯〜2100Mhz帯に限定されてしまうのです。
もちろん、スマホによっても、ワンセグを搭載している機種では、上記の周波数にプラスして、470Mhz〜700Mhz程度を受信できる場合もあります。
弊社が実験したスマートフォンは、ワンセグ対応のものでしたが、いずれも、盗聴器発見アプリ搭載時には、399.455Mhzの盗聴器には反応しませんでした。
おそらく、ワンセグのチューナーでは、対象外の周波数だった可能性が高いです。
また、仮に受信できたとしても、通常、スマートフォンでは、ワンセグ放送を復調する事はできるでしょうが、盗聴電波を復調する事は、まず不可能かと推測されますので、盗聴器かどうかの区別は、かなり厳しいのではないでしょうか。
お客様でよく誤解されていらっしゃるのが、アプリを入れれば機能が追加される、という点です。確かに、アプリをダウンロードすれば、スマホに新しい機能が追加されますが、追加される機能はあくまでスマホの能力の範囲内、つまり、スマホのハードのスペックで実現できる機能です。
そもそもハードに備わっていない機能を、アプリで実装することはできません。
よって、盗聴器発見アプリの類をダウンロードしたからと言って、スマホの電波受信能力が上がったりすることはないのです。
その上で、盗聴器によく使われる周波数帯を見てみましょう。
sUHF帯の盗聴器:340〜450Mhz付近
VHF帯の盗聴器:120〜160Mhz付近
1.2Ghz帯盗聴器: 900Mhz〜1500Mhz付近
2.4Ghz帯盗聴器:2000Mhz〜2700Mhz付近
5.8Ghz帯盗聴器:5600Mhz〜6000Mhz付近
上記を見れば、明らかのように、盗聴器の周波数帯と、スマホの電波受信帯は、かけ離れています。
いくらアプリを追加しても、スマホ本体の受信能力では、盗聴器を発見できないことが、お分かり頂けたと思います。
そして、以下のグラフがスマホ大手3社の電波受信帯と盗聴波の周波数帯、そして当探偵社の電界強度計(検知可能)と受信可能な周波数帯の比較グラフです。
これを見ると一目瞭然でしょう。
スマホの盗聴器発見アプリは、ほとんど役に立たない事が判るかと思います。
一般的に使用されている盗聴器でさえ、スマホでは検知することができないのです。
3.考察
上記の実験結果から、スマホの盗聴器発見アプリは、ほとんど役に立たない事が判るかと思います。
産業スパイやプロの探偵などは、盗聴器を発見されない為に、見付けることが困難なステルス盗聴器を使いますが、盗聴器発見アプリを使用しても、これらの盗聴器を発見できない事は言うまでもありません。
盗聴器発見アプリの問題点については、ご理解頂けたかと思います。
もし仮に1900Mhz帯〜2100Mhz帯(ワンセグの場合は、ワンセグ放送と同じ帯域)で盗聴波を出す盗聴器が存在すれば、盗聴器発見アプリの類は、何らかの反応を示す可能性はあります。
上記を考えれば、100%使えないとまでは言えませんが、99%以上、使い物にならないと考えて問題ないと思います。
もし、本当に使える盗聴器発見アプリが出てくるとすれば、ハードウェア設計の段階から、盗聴器発見機能を盛り込むしかないでしょう。
手軽に盗聴器を発見できるという、目の付けどころは面白いですし、実際に、多くのお客様がこれらの盗聴器発見アプリに手を出したと聞きます。
アプリストアのダウンロードランキングにも、こうした盗聴発見アプリの類が、10位以内にランクインしていた時期がありました。
現代社会の日本で、盗聴が身近にあるという危機意識の高まりがそうさせたのでしょう。
こうした盗聴器発見アプリを目にすることで、今まで危機意識を持っていなかった方々にも、盗聴が実はすぐ身近にあると知ってもらえたと思います。
但し、ツールとしてのスマホには当然限界がありますし、盗聴については、人によって切迫した事態になっていることが多々あります。
これがあれば安心というような誇大広告にもとれる表現は控えるべきでしょうし、アプリで出来ることと出来ないことを、素直にスペック表に記載した方がいいのではないでしょうか。
弊社の盗聴器発見アプリに対する、評価としては、以上となりますが、また、質問等があれば、弊社に直接、メール、電話等でお問い合わせ頂ければと思います。
自分で出来る盗聴器を発見する手順を解説しています。
盗聴器を発見する方法を徹底解説
▲ ページ先頭へ