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ゼロクリック攻撃とは

ゼロクリック攻撃とは、ユーザーが何もしなくても成立する乗っ取り方法のことです。
たとえばiMessageに届いた特殊なメッセージを開かなくても、受信した時点で処理され、脆弱性を利用されることがあります。
Appleはこれを防ぐため、iOSに「BlastDoor(ブラストドア)」という仕組みを導入しており、怪しいメッセージを安全に処理できるようにしています。
さらに強力な防御機能も追加されています。(対策の項で解説します)
過去に使われた手口

2023年に発見された「Operation Triangulation(オペレーショントライアンギュレーション)攻撃」はその代表例です。
これはiMessageの受信者が何も操作しなくても、特殊なメッセージをきっかけに複数の脆弱性を連鎖的に利用し、iPhoneを乗っ取るというものでした。
攻撃によって端末内部のSMSや通話履歴、写真、位置情報といった個人データが盗まれるだけでなく、マイクやカメラを遠隔で操作されたり、キーチェーンに保存された情報やアプリ(LINEなどの外部アプリ)のチャット履歴まで流出する危険性が指摘されています。
標的となったのは政府関係者や企業関係者などハイリスクな利用者が多かったとされていますが、私たち一般のユーザーも無関係ではありません。
この攻撃は長期間気づかれにくく、端末が異常動作を示さないケースもありました。そのため、専門家の解析やバックアップファイルの調査によってようやく感染が確認されることもありました。
※Appleはすでに該当する脆弱性を修正するアップデートを提供済みです。
ゼロクリック攻撃から身を守るには

ゼロクリック攻撃を完全に防ぐのは難しいことですが、次の対策を取ることにより攻撃を受けるリスクを大きく減らすことができます。
ゼロクリック攻撃は「未修正の脆弱性」を狙ってくるため、OSを最新にすることが最重要です。Appleは通常のiOSアップデートに加え、緊急時には「迅速なセキュリティ対応(Rapid Security Response)」を配布します。設定アプリの「一般 > ソフトウェアアップデート」で「自動アップデート」をオンにすれば、通知を待たずに常に最新の保護を受けられます。
更新を後回しにすると、その隙を狙われる危険が高まります。ゼロクリック攻撃はiMessageやSMSを入り口に使うことがあります。iOSには「不明な差出人をフィルタ」という機能があり、電話帳にない相手からのメッセージを別フォルダに隔離できます。さらに怪しい相手はブロックして、今後の接触を断ちましょう。
知らない差出人からのメッセージは開かない・触らないが鉄則です。
ロックダウンモードは、標的型攻撃に狙われやすい人のために設計された特別な防御機能です。オンにすると、添付ファイルや一部のリンク処理が無効化されるなど、メッセージやブラウザの機能が大幅に制限されます。やや使い勝手は落ちますが、その分「攻撃の入口を極端に減らす」ことができます。
記者、活動家、公職者、企業の機密に関わる立場の方は検討すべき対策です。
ゼロクリック攻撃は主にメッセージ経由ですが、攻撃者が別の手口を組み合わせてくる可能性もあります。
特に注意が必要なのが「構成プロファイル」や「証明書」。知らないサイトやメールから「これを入れてください」と促されても、絶対にインストールしてはいけません。設定アプリの「一般 > VPNとデバイス管理」を確認し、心当たりのないプロファイルがあれば削除しましょう。
万一感染が疑われる場合、最も安全なのは端末を初期化して、最新OSで復元することです。そのためにはバックアップが欠かせません。iCloudに自動バックアップを有効化しておくか、PCに定期的に保存しておきましょう。バックアップがあれば、感染時にデータを失わずに安全に復旧することが可能になります。
Appleはスパイウェア攻撃の疑いがあると判断したユーザーに「脅威通知」を送る仕組みを導入しています。通知を受け取ったら、本物かどうかをApple公式のサイトで必ず確認してください(フィッシングの偽通知もあるため要注意)。本物であれば、Appleの指示に従い、速やかにロックダウンモードをオンにするなどの対策を取りましょう。
おわりに
ゼロクリック攻撃は、操作なしでiPhoneを乗っ取られる危険な手口です。OSのアップデートなどの日常的な対策を徹底することで、攻撃から大切なデータを守ることができます。
スマートフォンの調子がおかしい、不審なことが多い、というときはセキュリティの専門家を頼ってみてはいかがでしょうか。
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